ゼノー・テック株式会社
『1mmはとてつもなく大きい』ゼノー・テック株式会社は、粉末冶金用をはじめとする精密金型メーカーです。国内5社、海外3社のグループで、自動車部品向けだけでなく幅広い分野向けの高精度の金型を作っています。
<プロフィール>左から
●Y.F.さん 総務部(課長)-1児のパパ-
●X.W.さん 営業部 営業事務 -2児のママ- (産休育休取得・現在は時短勤務利用中)
目次
頼れる人が近くにいなくても、働き続けられた理由
─X.W.さんご夫婦のご両親は、4人とも中国にいらっしゃるそうですね。さらに今はご主人も単身赴任中とのことで、日本で仕事を続けながらの妊娠・出産・子育ては、心細かったのではないでしょうか?
X.W.
はい。近くに頼れる家族がいないので、自分ひとりでやっていけるのか不安でしたが、妊娠を報告したとき、上司や周りの方が「おめでとう」と言ってくれました。出荷の仕事で重たい箱を運ぶこともあるのですが、「危ないから代わるよ」と自然に声をかけてくれて、今後の仕事環境に関して安心しました。
─気にかけてもらったことで、一番印象に残っていることはありますか?
X.W.
たくさんありますが、中でも急遽入院した際に、上司がメールをくれまして「仕事のことは心配しなくていいよ」と言ってもらえたことが一番印象に残っています。同僚も「仕事は代わるからね」とメールをくれました。事前に全体の引き継ぎについては話し合っていましたが入院は急でしたので、翌日の仕事のことも引き継げないままでご迷惑をおかけしたと落ち込んでいましたが、このようなメールをもらい非常に救われました。

─入院中の不安のなか、そういったメールをもらえるのはうれしいですね。
X.W.
はい。今年に入ってからも、下の子が急に熱を出して何度か休んでいるのですが、朝に連絡すると「子どもを最優先にして」と言ってくれます。インフルエンザで1週間近く登園できず仕事を休むこともありましたが、そのたびに同僚や上司の気遣いに助けられています。
─Y.F.さんから見て、そうした雰囲気はどこから生まれているのでしょうか?
Y.F.
特別に何かをしたというより、もともとの文化に近いと思います。男性が多い職場で、そのぶん女性社員の事情には自然と目が向きやすいのかもしれません。時短制度も、一律に当てはめるのではなく、一人ひとりの家庭状況に合わせて出退勤時間を調整するなど、個別に柔軟に対応してきました。現場もそれを前提に動いてくれているので、無理のない支え方ができていると思います。
─精密さが求められる現場でありながら、子育ての場面ではやわらかく寄り添う。そのギャップも印象的です。
Y.F.
仕事は厳しいですよ。でも、家庭の事情を切り離して働くのは難しいです。だからこそ、困ったときには自然に支える。そういう空気は、現場にも根付いていると思います。
急な呼び出しにも慌てないー1〜2週間先を見据えた準備が支える、子育てと仕事の両立
─復職後は時短勤務とのことですが、限られた時間のなかで、どのような工夫をされていますか?
X.W.
まず、優先順位を決めるようになりました。子どもが急に熱を出すこともあるので、「今日やるべきこと」と「明日でもいいこと」を分けて考えています。毎月必ず発生する仕事は、できるときに少しずつ前倒しで準備しておくようになりました。1週間先、2週間先まで意識しておくと、急に休むことになっても周りに迷惑をかけにくいです。
─先回りして、仕事を見える形にしておくわけですね。
X.W.
はい。もし急に帰らないといけなくなったら、翌日の出荷に必要な書類や、箱に何を入れるかなどを細かくメモやメールで残しています。誰が見てもわかるようにしておくことで、私がいなくても出荷がスムーズに進むよう、誰にでも引き継げる状態をいつも心がけています。
Y.F.
それを見たら、私でも出荷の準備ができますね。
─その工夫は、X.W.さん個人の努力に見えて、職場全体の働きやすさにもつながっていますね。
Y.F.
そうですね。弊社は精密金型製作で、いわば職人技が必要な部分があります。なので「その人がいないと止まる」状態になってしまう。でも、X.W.さんのように業務を整理して見える化をしてくれると、少なくとも製作の周辺は安心してカバーできます。私たちが今後進めていきたい工場での多能工化にもつながる話だと思います。

─その一方で、制度や情報を必要な人にきちんと届ける難しさもありそうです。
Y.F.
ネット上に、社内の規定や制度を確認できる仕組み自体はあるのですが、現場では一人一台パソコンがあるわけではなく、共有の端末を使う場面も多いです。常にポータルを見られる環境ではないので、制度があっても十分に伝わりきらないことがあります。ポータルに載せるだけで終わらせず、現場に合った伝え方を考えていかないといけないと思っています。
─精密さを求める現場だからこそ、情報共有もまた、現場仕様でないと機能しないのですね
Y.F.
そう思います。うちは「1ミクロン」の精度を求める仕事ですから、日々の業務では高い集中力が必要です。その中で、スタッフが休んでも現場が回る状態を少しずつ作っていくこと、必要な情報が必要な人に自然に届くようにしていくことが必要です。
ひとりで抱え込まなくていいー支え合う風土が育てる、子育てしながら働き続けられる職場
─子育てをしながら働くなかで、家族との時間や向き合い方にも変化はありましたか?
X.W.
あります。今は夫が単身赴任中なので、毎日の家事は自分で回す場面が多いですが、夫が帰ってきたときには料理や掃除をしてくれますし、上の子も下の子を見てくれることがあります。会社にも支えてもらっていながら、家族にも助けてもらっています。正直、小さい子どもがいると有給休暇だけでは足りないと感じることもあります。それでもこの会社で働き続けたいと思えるのは、困ったときにひとりじゃないと思えるからです。子育て中でも「仕事が楽しい」と思えるのは、すごくありがたいことです。
─Y.F.さんは、これからどんな職場にしていきたいですか?
Y.F.
制度の整備ももちろん必要ですが、それ以上に、安心して声を上げられることが大切だと思っています。男性の育休取得も含めて、まだまだこれから改善できることは多いです。ただ、一部の人だけが頑張るのではなく、会社全体で無理なく支え合える形にしていきたい。その積み重ねが、結果として働きやすさにも、会社の強さにもつながるはずです。

X.W.
私は未経験で入社しましたが、ここで仕事を覚えて、できることが増えていく達成感を知りました。勉強ももっとしていきたいです。子育てで大変なことはあっても、仕事を続けたいと思えるのは、周りの支えがあるからです。これから入ってくる方にも、ひとりで抱え込まなくていいよ、と伝わったらうれしいです。
ー制度の名前だけでは伝わらない、現場のやさしさと支え合いの実感。精密さを追求する職場だからこそ、一人ひとりの事情にも丁寧に向き合う。そんな自然体の空気が、ゼノー・テック株式会社で子育てしながら働く安心感の土台になっているのかもしれません。