みのる産業株式会社
住所:〒709-0892 岡山県赤磐市下市447
電話:086-955-1122
開発から生産、営業までを一貫して手掛ける農業機械メーカーとして、独創的な製品を生み出しています。「あの手この手で未来を支える」をモットーに、みのるグループ6社で多角的に事業を展開しています。
<プロフィール>
●T.H.さん研究本部 第二研究部(水田除草機の設計)-1児のパパ–(育休2ヶ月)
目次
育休─「休むことへの嫌悪感」と「取るのが当たり前」の狭間で。
─今回は元気いっぱいのお子さんも参加してくれています。T.H.さんは現在、水田除草機の設計をされていますが、ご自身でもお米作りをされているそうですね。
T.H.
はい、少ない面積ですが自分のところでもお米を作っています。みのる産業は、有機農業に強みがありまして。水田除草機は除草剤を使わない有機農業にとって欠かせない機械なんです。自分が「使用者」として欲しい機能をダイレクトに形にできるのは、設計者として一番の役得ですね。農家として得られた知識や経験を、会社に還元できるような設計ができたらなと思ってます。

─まさに理想的な設計環境ですね。そんな中、息子さんが生まれて2ヶ月の育休を取られたわけですが、周囲の反応はいかがでしたか?
T.H.
それが、なかなかの温度差がありました(苦笑)。妻は喜んでくれましたが、同居している私の祖父母(お子さんから見た曽祖父母)は大反対でした。
─祖父母の世代だと、価値観も違いますよね。
T.H.
ええ。祖父母の時代は「休む」という概念自体が希薄でしたから、家の中に私がいると「何で仕事に行かんのか」「今日も休むんか」と。仕事を休んでいいということが信じられなかったようです。
─会社の方はどうだったんですか?
T.H.
会社は真逆でした。妻の妊娠がわかって、上司や部長にはかなり早めに報告したこともあり、ありがたいことに「育休は何ヶ月?半年?1年取るか?」と、取るのが当たり前の前提で話が進みました。ずっとこんな感じに対応していただき、家庭で肩身が狭かった分、会社の「どうぞどうぞ」という前のめりな姿勢には本当に救われました。
─会社では育休取得は当たり前の空気だったんですね。
T.H.
はい。でも、実際に妻が体調を崩した時、私が家にいて育児をしている姿を間近で見て、祖父母の意識も少しずつ変わっていきました。今では、家族で支え合うための育休という仕組みを理解してもらえた気がします。

夜泣きが教えてくれた「自分の危うさ」と、夫婦で描いた30年の航海図
─実際に2ヶ月間じっくり育児に専念してみて、いかがでしたか?
T.H.
大きな収穫のひとつは、自分だけの視点がいかに危ういか、そして自分には相手への配慮が欠けていたのかということですね。実は私はこれまで、「朝起きられない人」に対して、「根性が足りないだけだろう」と冷ややかに見ていたんです。でも、育休中に夜泣き対応をしようとしたとき、自分は全く気づかずに寝てしまっていました。夜泣きには気づけないのに、睡眠は浅く、朝は起きるのがつらい。その時初めて「ああ、起きられない人には、その人なりの背景がある。起きられないときもあるんだ」と気づきました。相手を責める前に、その背景に思いを馳せる大切さというものが、育休での一番の収穫だったと思います。
─子育てを通して、人間としての深みが一段増したようなエピソードですね。
T.H.
そうなっていればいいのですが(笑)。それと、もう一つ大きかった収穫が「夫婦の対話」です。
─2ヶ月間、ずっと一緒にお話しされていたとか。
T.H.
はい。普段、会社ではあまり喋らないタイプなんですが、家では妻とずっと話していました。息子を真ん中にして、「5年後、10年後、そして30年後、家族でどうなっていたいか」というライフプランを徹底的に話し合ったんです。

─30年後まで!それはすごいですね。
T.H.
育休のメインは育児ですが、この副次的に付いてくる「妻といっぱい話せる時間」こそが、これからの家族の安定のために一番必要でラッキーな「おまけ」だったなと思います。安定した家族像が鮮明になったことで、仕事への向き合い方も変わりました。
我が子においしいお米を。農家・設計者として次世代に繋ぐもの
─具体的に、お仕事へのモチベーションはどう変化しましたか?
T.H.
今のモチベーションは、「我が子においしいお米を食べさせてあげたい」ということ。農業をしながら設計に携われるというアドバンテージを生かし、農業の現場から見た設計で会社にも農家さんにも貢献できます。そして、水田除草機を作ることも、自分の田んぼで泥にまみれることも、すべてはこの子の口に入る食の安全と未来に繋がっているんだと感じています。

─設計者としての技術が、そのまま父親としての愛情に直結している。これほど説得力のあるモノづくりはありませんね。
T.H.
ただ、課題もあります。実は有給を使い果たしてしまったんです。今年は休日に雨が多くて平日に農作業をしなければならない日が多くありました。農家は天候に左右されるので、休みの取り方も計画どおりにはいきません。来年は天候をよく考えて休みを取りたいですね。それに加えて、妻が育休から復帰すれば、息子が急に熱を出すなど、育児で休みが必要になる場面は増えると思います。そうなると、これまで以上に周りのサポートが欠かせません。
─これからは農業に加え、育児で急なお休みが必要になる場面が、さらに増えそうということですね。職場の皆さんはどのように支えてくださっていますか?
T.H.
「休みの申請は俺がしとくから、早く行ってやれ」と、理解を超えて応援してくれる上司や仲間がいます。私が担当している設計グループは二人きりなので負担をかけてしまう申し訳なさはありますが、だからこそ「次は自分が誰かを助けたい」と強く思います。

─素晴らしい循環ですね。最後に、これからみのる産業に入ってくる未来の仲間や、育休を迷っている方へメッセージをお願いします。
T.H.
現役時代に、これほど長く家族と常に一緒に過ごせる機会は、この育休制度以外にありません。赤ちゃんの目まぐるしい成長を妻と共有できるのはもちろんですが、何よりパートナーと「これから」を語り合う時間は、一生の財産になります。ぜひ、このラッキーな機会を逃さないでほしいですね。
─取材の間、息子さんをだっこするT.H.さんの眼差しは、設計者としての誠実さと父親としてのやわらかさとをいったりきたり。家庭でのすてきなパパぶりが垣間見えました。
育休取得について「祖父母の反対」という世代間の価値観の違いが壁となりましたが、それを乗り越えることができたのは、会社が「一番の味方」として背中を押し続けたことでした。当初、T.H.さんは会社が男性育休をどう捉えているか、不安を感じていたそうです。しかし、上司から「1年取るか?」と声をかけられるなど、みのる産業の上層部は時代の変化をいち早く捉え、積極的に取得を推奨するスタンスへと進化していました。他部署では1年の長期取得をした社員もいるなど、現場から上がる「取りたい」という声が、上層部の「取ってほしい」という想いと自然に合致する文化が育まれています。
息子さんにおいしいお米を食べさせたい。その純粋な思いが、みのる産業の水田除草機を通じて、日本のそして世界の食の未来を支えていく。そんな手応えを感じた取材でした。
▶かぞくと編集部: 「申請は俺がしとくから」という上司の言葉、本当に心強く胸が熱くなりますね。会社や仲間が「どうぞどうぞ」と前のめりに背中を押してくれる環境だからこそ、安心して育休に入ることができ、「次は自分が誰かを助けたい」という素敵な“お互い様”の連鎖が生まれるのだと感じました。
