備商株式会社
住所:〒702-8022岡山市南区福成2丁目19番6号
電話:086-263-1191
地域に密着した機械設備の専門商社として公共インフラ設備や民間工場のプラント設備に携わり、販売だけでなく、一貫したアフターメンテナンスも行い地域に貢献してまいりました。これからも高い技術力と提案力を活かし、お客様の信頼と満足を得ていきます。
目次
「お天道様が見とるよ」―― 祖母の教えが導いた「誠実」の原点

─御社は来年で創業75周年を迎えられますね。上野社長が経営の舵取りをするうえで、大切にされている「思い」についてぜひ伺いたいです。
上野社長
基本的に、先代たち諸先輩方が築いた、社員同士が家族ぐるみのつきあいをしながら、みんなで助け合おうという社風がベースにあります。私自身の大切にしている判断軸は、亡くなった母方の祖母の言葉です。「お天道様が見とるよ」。これは今でも強烈に残っていて、悪いことは絶対にできないな、と思っています。
─「お天道様」。その一言に、すべてが凝縮されている気がしますね。
上野社長
そうですね。そして「されて嫌なことは絶対したらあかんよ、されて嬉しかったことはどんどんしてあげなさい」。この、祖母から影響を受けた思想が私の経営の根底です。かつては、利益を出すことと社員の働きやすさは反比例するものだと思われていた時代もありましたが、それは違うとはっきり確信しています。

─きっかけとなる出来事はなんだったのでしょうか?
上野社長
60周年記念事業としての社屋建設です。もともとは「社屋は利益を生まないから、四角くて安くて、それなりのものができればいい」と考えていたんです。しかし、そのときに会社って何だろう、社屋って何だろうとじっくり考えました。社長としての私の一番の仕事は会社を継続させ組織の成果を上げること。ではその組織の成果を生み出す強みというのはなんだろうと考えたら、やっぱり人と人とのつながり、人なんですよね。そこで社屋の方針は180度転換し、社員が「家族に自慢できるような建物」を目指しました。経営者の仕事は「社員が生き生きと働ける環境(器)を整えること」だと気づいたんですね。
─「家族に誇れる場所」であることが、結果として社員さんのモチベーションや利益に繋がる……。経営者として考え方が変わる大きなきっかけだったのですね。

上野社長
社員が子育てなど自分の生活を大切にしながら、気持ちよく働ける環境整備や仕組みづくりこそが、私の仕事です。組織の成果と社員の働きやすさは決して相反するものではないと、この社屋の件を通じて気がつきました。
【実践】「ごめんなさい」という言葉をなくしたい ―― 制度に「心」を吹き込む対話
─社長のお話を伺っていると、現場の小さな「ひっかかり」の感情にとても敏感でいらっしゃいますね。特に、掃除の時間を朝から夕方に変更されたエピソードはとても印象的です。
上野社長
「ごめんなさい」という言葉をなくしたかったんです。短時間勤務の社員が、子どもを預けて必死に駆けつけても、月曜朝の掃除に数分間に合わない。すると、みんなが掃除をしている中を「ごめんなさい、遅れました」と言って入ってくることになる。本来、制度として認められた働き方なのに、会社が彼女たちに「謝らせる習慣」をつけてしまっていました。
─当たり前に取得していいはずの時短勤務なのに、心のどこかで「申し訳ない」と自分を責めてしまう。それをなんとかできないかと、仕組みで解決されたのですね。
上野社長
ええ。社員と相談してアイデアを出してもらい、掃除の時間を夕方に変えました。そうすることで、彼女たちは誰にも謝る必要がなくなりました。育休代替支援制度も同じ思いです。育休から戻らない最大の理由は、周囲への「しわ寄せ」を気にする居心地の悪さと人間関係にあると感じていました。ならば、残って働く同僚に会社が直接手当を出すことで、支える側に対しても、頑張りを認め、報酬を得られるようにしよう、と。
─目に見える対価を得ることで「お互い様」と言い合える空気をつくる。まさに仕組みづくりが生む「誠実」の形ですね。

上野社長
制度は、細く堅い真っ直ぐな一本の柱ではなく「柔軟な太いパイプ」のような大枠でいい。あとは自由に、裁量を持たせることが自律的な組織には欠かせません。今では、社員が自ら同好会を立ち上げ、会社を良くする提案をどんどん上げてくれます。私一人が考えるより、みんなに任せた方がよっぽど良いものが生まれますから(笑)。社員が気持ちよく働いてくれたら組織の成果が上がるという、世の中の正しいルールというか、僕が確信しているところを、全ての部門が身にしみて理解している社風になってきました。今、うまく回っているなって感じますね。
「若い世代が作る未来」のために ―― 成長を支える「器」としての展望
─制度づくりの先にある、人材育成について伺います。社長は会社を、社員が成長するための「器(うつわ)」だと表現されています。働きやすさを整えたその先に、社員の皆さんにどのような「働きがい」を見つけてほしいとお考えですか。
上野社長
「ダイヤモンドはダイヤモンドでしか磨かれない」といいますね。なりたいようになるためには、人と人との中での勉強の積み重ねしかないと思っています。会社というのは、社員がチームワークと人間関係を大切にしながら自己研鑽して「なりたい自分」になるための勉強の場であってほしいんです。働きやすさというのは、言ってみればハードの部分、環境・制度や待遇といったものだと思いますが、働きがいというのは、ソフトの部分で、一人一人の内側から来るものですよね。なりたい自分になるっていうのはここから出てくるもの。だから、もっとみんなから自由な意見が出てほしいなと期待しています。
─社員さんが自発的に活動されるのも、この「器」が安心できる場所だからこそ、自分を出せるのでしょうね。

上野社長
そうだと嬉しいですね。以前、制度を変え始めた頃、お客様から「御社の営業マンが会社のことを自慢するんですよ」と言われることがありました。当時はそれが本当に嬉しかった。
─営業の方が外で自社のことを誇らしく語るというのは、最高の広報ですね。
上野社長
最近は、それが当たり前になりすぎていて、あんまり言わなくなったかもしれないですけど(笑)。でも、それが文化として浸透したということかもしれません。
─なるほど。「自慢」が特別なことではなく、日常の「誇り」になったのですね。最後に、これからの備商様が向かう未来についてお考えをお聞かせください。
上野社長
私たちの仕事は、社会インフラを通じて人の生命と財産を守ることです。その誇りを、これからの世の中を作っていく若い世代に繋いでいきたい。彼らが備商という「器」を存分に利用して、社会貢献も自己実現も叶えていく。私がいなくなっても、この器の中で皆が自律的に輝いている、そんな会社を未来に残していきたいですね。
─取材を通して感じたことは、制度の細やかさもさることながら、そこに流れる「体温」のようなぬくもりでした。印象的だったのは、時短社員の「ごめんなさい」という言葉をなくすために、掃除の時間をまるごと動かしてしまったエピソードです。効率を優先すれば見過ごしてしまうような社員の心の小さな軋みに目を向け、社員とともに解決しました。取材後、同席していた総務の方が教えてくれたひと言が忘れられません。「みんな、社長のことが大好きなんです」。チャーミングな語り口の社長と、そんな社長を信頼し、自律的に動き出す社員たち。備商という「器」は、お互いへの「誠実さ」という磨き砂で、これからも日々輝きを増していくに違いありません。
▶かぞくと編集部:今回の取材では、社長がチームワークを何より大切にされ、社員の声に真摯に耳を傾けておられる姿勢が強く印象に残りました。お話の端々から、社員の皆さんを深く信頼し、その成長や挑戦を心から応援されていることが伝わってきます。
だからこそ、社員の方々も同じ熱量で会社の未来を考え、前向きに動いていけるのだと感じました。
