岡山両備タクシー株式会社
住所:〒700-0853 岡山県岡山市南区豊浜町11-47
電話:086-263-2111
黄色いタクシーでおなじみ両備グループのタクシー会社です。タクシー事業および取引先企業や学校所有の車両運行を請負う車両管理事業を運営しています。
プロフィール(左から)
●Y.O.さん 人事チーム(リーダー)
●S.S.さん タクシー業務(班長) -2児のパパ-
育休取得への不安もあったけれど、「家族を優先する」と決断
―育休を考えたきっかけを教えてください
S.S.
第二子の妊娠で妻の体調が心配だったからです。第一子のときに切迫流産の危険があり、今回は私がサポートしようと1ヵ月の取得を決めました。仕事をしていると、父親として家族のそばにいたい時にいられない。すぐ動ける環境にいられたことで妻にも喜ばれ、取得して本当によかったと思いました。
Y.O.
2023年に育休を取得したS.S.さんは、男性育休制度法改正後、初の男性育休取得者でした。S.S.さんが会社全体の育休取得推進のきっかけとなってくれました。
―初の男性育休取得者ということですが、育休に入るときの職場の雰囲気はどうでしたか?
S.S.
いつもと変わらない雰囲気で送り出してもらいました。上司からは「しっかり洗い物などをしてサポートしろよ!」と声をかけられました。
―育休を1ヵ月取得するにあたって不安はありましたか?
S.S.
収入面の不安はありましたが、家族との時間を大事にすると決めて人事に相談をしました。タクシードライバーは歩合給なので、育児休業給付金についても歩合給の手当含むのか、基本給だけなのか、実際はいくらになるのか。そういった分かりづらい面を丁寧に教えてもらいました。ドライバーとしては、ブランクができたら運転感覚が鈍らないか、会社のルールや街の変化などについていけるかといった心配や、班長の私が1ヵ月抜けてしまったら、班のみんなの士気が下がったり事故を起こしたりしないかという心配は少しありました。しかし復帰してみると、現場は問題なく運営されており、皆がそれぞれの役割をしっかり果たしてくれていました。

Y.O.
S.S.さんはかなり成績優秀なドライバーで、申し出のあった当初は、会社として売上減少をどうしようかという話が出ました。でも、そこはCOOの一言で取得OKとなりました。
先陣切って、流れを変えるー忠恕の精神
―S.S.さんの申し出時のCOOの一言はどんなものだったんですか?
Y.O.
「OK!そういう時代でしょ!」と二つ返事でした。売上についても「そんなことは心配しなくてもいいから」と。そこからは育休取得は“特別なこと”ではなく、“当たり前”として捉えるようになりました。
―男性育休は、直近で取得率が85%まで上がっていると伺いました
Y.O.
そもそも子育てにひと段落した40〜60代の社員が多く、対象者が少なかったのですが、現在は若い社員が増えています。S.S.さんの後に続いてどんどん取得するようになって、現在に至るまでに6名が取得しました。男性でも長期(1年)育休取得の実績もあります。
―希望者の相談にはどう対応していますか?
S.S.
私のときは、初めてのことだったので。質問や確認は、まず上司を通して人事のY.O.さんに回してもらう流れだったので、回答をもらうまで時間がかかるのがちょっともどかしかったですね。
Y.O.
そうですね。当時はS.S.さんのおっしゃるように時間がかかりました。今は個別面談で直接お話しできるように改善しています。育休は制度がよく変わるので、その都度正確な情報をお伝えし、例えば出産時期に合わせて分散した休みの取り方など、こちらからもいろいろ提案できるようになりました。
―育休を取得したことで、仕事に変化はありましたか?
S.S.
お子様連れのお客様への気配りが増えました。新生児期の大変さを近くで見て、親の気持ちがより分かるようになったと思います。ちょっと騒いでも「気にしなくて大丈夫ですよ」と声をかけたり、お子様が興味のあるキャラクターの話題で距離を縮めたりして、短い乗車時間でも「このタクシーでよかった」と思ってもらえるように努めています。1人目の時より、2人目の育休を経て、そういった実感が深まりました。
―お客様も車中を過ごしやすくなったでしょうね
Y.O.
弊社の所属している両備グループでは、経営理念として「忠恕〜真心からの思いやり〜」を大切にしています。諸先輩方が忠恕の精神を大切にして、私たちに引き継いできたからこその今だと考えています。社会・お客様・社員への思いやりとなり、行動の指針になっています。
―忠恕の精神が育休推進の土台となっているようですね
Y.O.
はい。S.S.さんが奥様を想って休暇を考えたこと、上司が成績優秀者のS.S.さんの申し出を誠実に受け止めたこと、そしてCOOの判断力。すべてがそうなのだと思います。

現場の工夫と、これからの社内の雰囲気づくり
―タクシー現場での育休取得の実際と対応を教えてください
Y.O.
ドライバーは柔軟な働き方ができるので、育休取得への対応はしやすいですね。育休中の社員をカバーするドライバーは、業務は増えますが、その分売上も上がるという良い面もあります。
S.S.
私がサポートする側だったら、給料アップのチャンスだと思うと思います(笑)
Y.O.
ドライバーや車両の管理などを行う運行管理者についても、現在は管理職によるカバーや兼務体制の整備、人員支援など、工夫して調整しています。今後はさらに休暇を取りやすく、働きやすい環境になるよう改善を重ねていきます。
―育休の長期取得者への対応はどうされていますか?
Y.O.
長期の方は復帰時に研修期間を設けました。一人ひとりの状況に寄り添いながら、段階的に復帰してもらっています。育休中は月1回程度の手続き来社の機会も活用し、状況を把握するようにしています。
―今後の制度運用についてのお考えはありますか?
Y.O.
制度があっても使われなければ意味がありません。管理者も含め、相談しやすい雰囲気づくりを目指しています。最近は若手が増え、必要に応じて制度運用も進化していますし、困ったときに声をあげられる仕組みがあります。またCOOの意向が現場まで浸透していることが、祝福ムードにつながっていると感じます。
―育休取得を目指し、後へ続く社員へのメッセージをお願いします
S.S.
人生一度きり。積極的に利用すべきだと思います。「育休はしっかり取って!そのかわりその直前はしっかり働いておこう!」です。

Y.O.
そうですね。直近の給与が手当の基準になるので、固定給ではない分、頑張りが反映されます。計画的にしっかり働いて、しっかり休んでくださいね。