プロフィール(左から)
●T.K.さん 倉富物流センター-2児のパパ-
●Y.M.さん 経営管理本部 総務部(次長)
誰でも安心して働ける環境を整備
―物流会社である貴社が、2018年9月(かもめ保育園)と2021年10月(第2かもめ保育園)に企業主導型保育園を開設しました。異なる分野の事業を始めたきっかけは何でしょうか?
Y.M.
2016年に「保育園に落ちた」という内容のブログが注目を集め、待機児童問題が顕在化していました。また岡山市の当時の待機児童数は全国ワースト2位でした。弊社は、地域社会の一員として、この深刻な問題を解消へ導くために貢献できないかという問題意識を持ったことが事業を始めるきっかけです。

―待機児童問題の解消は、貴社にとっても意義がありますね。
Y.M.
社会貢献はもちろんのこと、弊社の働き方改革にもなりました。保育園が足りない状況は従業員の子育てにも関わります。そこで「株式会社が保育園を作るにはどのような手段があるか」意見を交わすうちに2016年4月に創設された内閣府主体の事業“企業主導型保育事業”の存在を知りました。
―女性が働きやすい環境づくりにもつながりましたか?
Y.M.
物流業界は、男性が働く職場というイメージがあります。弊社も女性従業員の割合はわずか16%です。弊社の保育事業への参入が、物流業界として女性の社会進出および社会復帰に対する取り組みの一環になればと思っています。
ゼロベースでスタート。5年をかけて2つの保育園を開設
―紆余曲折を経ての保育園設立だったと思います。エピソードを聞かせてください。
Y.M.
まず保育園事業の話が持ち上がった段階で、全従業員約700名(当時)にアンケートを実施しました。設立趣旨の告知と、保育園事業に対する意向を確認するためです。結果は「妻の社会復帰を後押しするために子どもを預けられたらと考えている」「今、他の保育園に通っているけど、頑張ってほしい」など、多くの方から応援メッセージが届きました。その内容を参考に個別ヒアリングを行い、事業に反映しました。
―T.K.さんは貴社が保育園を運営することについて、どのような感想をもちましたか?
T.K.
僕は二人目が生まれる頃にその話を聞きました。もともと共働きを考えていたので、従業員のための保育園を自社で作ってくれるのは有り難いと感じました。

―約5年間で保育園を2園開設されています。特に苦労した点は何でしょうか?
Y.M.
ゼロベースでの進行だったので、何もかもが初めてで苦労しました。かもめ保育園(南区新保)は完成間近の2018年7月に発生した西日本豪雨災害の影響を受けながらの進行になり困難を要しました。第2かもめ保育園(中区倉富)は新型コロナウイルス感染症に翻弄されながらも自治体と協議を重ね、開園にこぎつけました。最も難航したのは土地探しです。今回の事業ではすべてにおいて国と岡山市の承認が必要でした。利便性を考慮して、国道2号(岡山バイパス)沿いの土地を選定しました。しかし第2かもめ保育園は市街化調整区域だった為、現在の場所に決定するまでが大変でした。
子どもたちの成長につながる保育を実践
―プログラムの策定ではどのような創意工夫を凝らしていますか?
Y.M.
私どもでは情操・食育・行事などでオリジナリティーを感じさせる保育の提供を大切にしています。特徴あるプログラムとして、ネイティブ講師とのオンライン英会話、有資格者によるリトミック、3歳児以上限定のプログラミング、スイミング教室(かもめ保育園園児限定)、栄養士による手作り給食・おやつの提供などを用意しています。
―園内の保育制度についてはいかがでしょうか?
Y.M.
現在、両園で0歳から小学校入学までの約70名の園児をお預かりしています。基本は全員が一緒に過ごす混合保育です。年齢が異なる子どもと接することが学びの場になり情操教育にもつながると考えているからです。保育の内容により年齢で分けることもあります。例えば小学校に上がる前の子どもたちは午睡時間を使ってドリルを解き、文字の練習をしています。

―貴社ならではの保育園行事はありますか?
Y.M.
物流会社のアイデアを取り入れた交通安全教室を毎年行っています。交通知識の向上を目的に、信号の見方や横断歩道の渡り方などを指導します。弊社のトラックを使う体験機会も設けています。また、2021年1月に、グループ企業として観光農園かもめファームが設立されました。いちご狩りなどが楽しめる施設を活用して、親子遠足を実施しています。
「企業・従業員・地域」の三方よし
―企業主導型保育園の立ち上げから5年が過ぎました。社内での変化はいかがでしょうか?
Y.M.
育休取得後に復帰する女性が増えています。入園条件で岡山市内在住に限定していないことから、お孫さんを通わせる従業員もいます。安心して出産・育児ができる環境が少しずつ認知されてきたことでドライバーになりたい女性社員も増えているようです。企業主導型保育事業への参入で福利厚生がより充実し、男女を問わず働き方や採用に変化を感じています。
―開園当初からご利用のT.K.さんの感想をお聞かせください。
T.K.
他所の保育園との比較はできませんが、子どもたちが周囲に心配りができる子に成長してくれて良かったと思っています。私たち夫婦も、待機児童問題による煩わしさや不安から解放され、経済的にも助かりました。妻は二人目が0歳の時、なかなかパート先が決まりませんでしたが、企業主導型保育園のおかげで子育てと仕事の両立が可能になり、社会復帰ができました。会社にとても感謝しています。

―貴社の英断が目に見える形で素晴らしい成果をあげ、より安心して働ける環境が整っているようです。地域社会にも効果をもたらしていることと思います。貴重なお話をありがとうございました。
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